プロのミュージシャンの読者さんに質問です。
Q.あなたは国に消費税を納めていますか?
この問いに
「うちは年間の売上が1,000万円以下だから消費税は納めてないよ!」
という方は、要注意です!
制度が変わることで、消費税を国に納める必要がでてくる可能性があります!
ちなみに、僕の事業形態だと影響を受けることはなさそうです。
演奏屋さん・楽器講師の皆さんは大丈夫そうですか?
前半ではインボイス制度の仕組みを、後半ではインボイス制度を無視してもいい人について解説します。
▶︎国税庁「インボイス制度の概要」
BASS NOTEでは、超かいつまんで分かりやすくシンプルに解説します。
詳しく知りたくなったら、税理士さんにしっかり聞いてみてください!
ミュージシャンのためのインボイス制度解説
インボイス制度とは
2023年10月から消費税のルールが変わるよ!
小さな会社・お店・商売をしている人は、納める税金が増えるかもしれないよ!
というのが、インボイス制度の入り口になります。
【消費税】
モノの売り買いなど、取引に課される税金です。
買った人(消費者)が負担して、売った人(事業者)が納める仕組みになっています。
消費税…!?
え、お買い物のルールが変わるんですか?
インボイス制度の煽りを受けるのは「売る側」です!
「買う側」は今までと何も変わりません!
――逆に言うと「音楽を売る側」の我々ミュージシャンには非常に由々しき事態なんです。
インボイス制度による我々ミュージシャンへの影響
- ギャラが減る
- 仕事が減る
結論から書くと、シンプルにこのどちらかの被害が発生します。
現状では、我々弱小フリーランスにとってはデメリットしかない制度であることは間違いありません。
インボイス制度の仕組みの詳しい解説
クライアントさん側の事情を覗いてみると――
「音楽家に対して払った消費税」は僕自身の消費税納税額から差し引けるのさ!
仕入税額控除っていう仕組みがあるからね!HAHAHA!
※経費として支払った消費税を売上の消費税から控除できる仕組み
というのが、これまでの世界線でした。
消費税の仕組み
分かりやすく見てみましょう。
どうも、レコード会社です!
このたびCDを発売しました!
100万円ぶん売れました!やったね!
はーい、 お疲れ。
じゃあ消費税として売上の10% = 10万円を国に納めてください!
あ、はい……。
レコード会社が国に納める10%。
これが、普段我々がCDを買うときに追加で払っている消費税です。
仕入税額控除の仕組み
あの…、
CDを作るときに演奏屋さんとかプレス屋さんとかに経費で50万円+その消費税5万円を払ってるんですけど……。
チッ…!
じゃあ「仕入税額控除」を使わせてあげます。
CDの売上の消費税10万円 – 経費に使った額の消費税5万円 = 5万円
を国に納めてください。
やったゼ。
納税額減ったゼ。
「経費として払った消費税」のぶんは、納税額から差し引いてあげるよ!
その代わり、きちんとお金の流れの証拠(領収書)は残してね!
これが仕入税額控除です!
これが税務署側の視点。
仕入税額控除を受けるために、領収書が必要なのさ!
………インボイス制度が導入されたら、適格請求書(=インボイス)じゃないと控除の対象にならないんだけどね。
これが我々のクライアントさん側の視点です。
インボイス制度による環境の変化の仕組み
今まではどんな領収書でも経費として計上できました。
これからは国が認める請求書(インボイス)で記録された消費税のみを経費として認めるよ!
インボイス制度が導入されると、納税の際に「適格請求書(通称: インボイス)」じゃないと国に経費として認められなくなります。
そして、インボイスを発行できるのは国に申請して「適格請求書発行事業者(インボイス事業者)」として登録された事業者だけです。
国に「インボイス事業者になりたいです!うちにも登録番号を割り振ってください!」と申請することで、適格請求書を発行する権利がもらえます。
ミュージシャン側がインボイス事業者ではない場合――
キミはインボイスを発行できないマンなのか…。
それなら
- インボイスが発行できる人に頼もうかな。
- 控除されない税金ぶんのギャラは下げさせてもらおうかな。
という流れが発生し始めるわけです。
適格請求書(=インボイス)があれば
インボイスを発行してくれるのかい!?
それなら君たちに支払うギャラを経費にできるから、今までと変わらないね!
ということになります。
じゃあインボイスを発行できる準備をしておけばいいんですね!
……と、思うじゃん?
インボイス事業者になると、これまで受けていた「年間売上1.000万円以下の人は納税免除だよ!」という免税事業者の恩恵を得られなくなります。
インボイスの発行権利を得ると「稼ぎが1,000万円未満でも税金は納めてもらいますよ!」に切り替わります。
▶︎国税庁「No.6501 納税義務の免除」
現状、我々弱小フリーランスに用意された選択肢は
- 制度への対応をスルー
ただしクライアントさんからの仕事量・ギャラは減るよ - クライアントさんのためにインボイス事業者になる
ただし事務作業も増えるし100%所得が減るよ
という二択なわけです。
インボイス制度の対象事業者になるためには、2023年3月31日までに国に申請する必要があります。
申請の受付は既に開始しています。
インボイスの影響を気にしなくてもいい人
音楽業界にも大打撃を与えそうなインボイス制度ですが「とくに何もしなくても大丈夫な人」も結構たくさんいるんです!
その対象になるのが、次の3つに当てはまる方。
- 取引相手が「消費者」である。
- 取引相手が「免税事業者」である。
- 取引相手が「簡易課税制度」を利用している。
ひとつずつ解説していきます。
取引相手が「消費者」の場合
まずは「取引相手が個人消費者の場合」です。
自宅で楽器教室を運営している講師の方や、個人で企画を主催するイベンターの方はこれに当てはまります。
私は音楽絡みの税金を税務署に払ったりしませんから!
先生からレッスンを受ける権利を課金して買ってるだけですから!
あ、もちろん住民税とかはちゃんと払ってますよ!
こういう個人が取引相手の場合です。
生徒さんは税金の控除のための書類とか関係ないので、先生側が面倒な手続きを増やす必要はありません。
僕の同業者さんはこのパターンです!
取引相手が企業さんじゃない場合は、とくにインボイスを気にする必要はありません。
取引相手が「免税事業者」の場合
次に「取引相手が免税事業者さんの場合」です。
主な取引相手がフリーランスや個人事業主の場合は、これに当てはまります。
うちは音楽を仕事にしているけど、年間1,000万円以下しか稼いでいない免税事業なんだ。
税務署に納税しなくていいタイプのやーつだから、キミがインボイス事業者とか気にしないよ!
年間売上が1,000万円以下の相手としか取引しない場合には、インボイスに対してそれほど神経質になる必要はないのかなと思います。
取引相手が「簡易課税制度」を利用している場合
うちは「売上の消費税に◯◯%を掛け算して納税額を決める」っていう簡易スタイルだから、細かい控除の計算とかは関係ないの!
年間の売上が1,000万円以上〜5,000万円以下の音楽事業者は、この計算方法を採用しているところが多いです。
このような相手とだけ取引をしてる場合には、こちら側がインボイス事業者になる理由はありません。
ざっくりまとめると
BtoC(事業者対消費者)のビジネスで生計をたてているミュージシャンは、大きくインボイスの影響を受けることはないよ!
ということになります。
……とはいえ、買い手からインボイスの交付を求められる場面も出てくるでしょう。
一概に「100%無関係だから気にしなくてヨシ!」と手放し喜ぶことはできない時代がやってくるのは間違いなさそうです。