今回は、II7の取り扱いについての解説です。
- ダブルドミナント
- スペシャル・ファンクション・ドミナント
このふたつの視点から解説します。
Key=Cの曲のなかにD7というコードが出てきた場合の解釈と演奏方法についてのお話です!
ダブルドミナントについて
キーンコーンカーンコーンという学校のチャイムから始まることで有名なスタンダード曲「If I Were a Bell」。
この曲を例に分析してみます。
1小節目に注目してください。
C7-F△7( =V-I)に向かうセカンダリードミナントとしてG7( =II7)が配置されています。
このように、「ドミナント7thコードに向かうセカンダリードミナント」のことをダブルドミナント(double dominant)と呼びます。
別名ドッペルドミナント(doppel dominant)。
英語圏では「V/V」「five of five」や「the dominant of the dominant」と呼ばれるのが一般的です!
エクステンデッド・ドミナントについて
6小節目移行の流れに注目です。
D7-G7-C7-F△7
セカンダリードミナントの連鎖が3つ以上続く流れのことを、エクステンデッド・ドミナント(extended dominant)と呼びます。
コードの考え方・処理方法はダブルドミナントと同じです。
ダブルドミナントとして挿入されたコードは、ミクソリディアンで処理するのが一般的です!
よく「II7=ダブルドミナント」という覚え方をしてしまう方がいますが、正確にはドミナントコードに4度進行するドミナントコードのことをダブルドミナントと呼びます!
スペシャル・ファンクション・ドミナントについて
こちらは定番のスタンダード曲「Take the ‘A’ Train( =A列車で行こう)」で解説します。
3〜4小節目に登場するD7( =II7)。
このコードは、ドミナント7thコードではなくてIIm7へと進行しています。
このようにドミナント7thに向かわない特殊なノンダイアトニック7thコードのことをスペシャル・ファンクション・ドミナント(Special Function Dominant =SFD)と呼びます。
- イパネマの娘(The Girl from Ipanema)
- Falsa Baiana
- Just Friens
などなど、II7-IIm7-V7-Iで進行する曲はたくさんあります!
ジャズスタンダードの”あるある進行”のひとつなので、覚えておきましょう!
このように解決していないドミナント7thコード上でリディアン♭7スケールが使えます!
リレイテッドIIの知識があると「II7-V7-Iの”V7”から派生したIIm7を置いているだけ!」と捉えられるので、ダブルドミナントの一種として取り扱うこともできるコードになります。
[おまけ] II7(9)について
Bobby CaldwellのWhat You Won’t Do For Love(風のシルエット)の循環コード進行の中に登場するII7(9)というコードについて。
| Db△7 C7 | Fm7 Bb7(9) |
↓
| IV△7 III7 | VIm7 II7(9) |
「IV△7→III7→VIm7」
通称 “丸サ進行”と呼ばれる超定番のコード進行です!
- IV△7→III7→VIm7-%
- IV△7→III7→VIm7-I7
このようにVIm7を引っ張るかI7に進行するのが定番なのですが、What You Won’t Do For LoveではII7へと進行しています。
このII7(9)の正体はVIm7、つまりFm7なんです。
Bb7(9) | Bb (Root) | D (M3rd) | F (P5th) | Ab (7th) | C (9th) |
Fm7 | Bb (7th) | F (Root) | Ab (m3rd) | C (P5th) |
コードトーン(構成音)を比べてみると、D以外のすべての音が共通していることがわかります。
ということで。
「What You Won’t Do For Loveに登場するBb7(9)はFm7の代理(回転系)である」という分析ができます!
「II7(9)はVIm7の代理として登場することがある!」と覚えておきましょう!
正体は、なんてことないIV△7→III7→VIm7-%でした!
ちなみにこの楽曲のII7(9)の上ではFエオリアンスケールで演奏することができます!