II7–%-IIm7-V7-I△7とか、
I△7-bVII7-IIIm7-VI7とか。
4度上のコードに解決していないドミナント7thコード上では、リディアン♭7スケール(Lydian b7)を使用するのが一般的です。
「どうして解決しないドミナント7thコードにはリディアン♭7が使えるんですか?」
という部分について解説します。
解決しないドミナント7thコードのことを、音楽理論用語でスペシャルファンクションドミナント( =Special Function Dominant =SFD)と呼びます!
合わせて覚えておきましょう!
解決していないドミナント7thコード上でリディアンb7が使える理由
II7上でリディアンb7が使える理由
解決しないドミナント7thコード( =SFD)の代名詞、II7から読み解いていきましょう。
実際のジャズスタンダード楽曲の例
- Take the ‘A’ Train(A列車で行こう) | 3-4小節目
- All of Me | 13-14小節目
Key=CにおけるD7 (II7)です。
※分かりやすいようにKey=Cで解説します。
II7がVに向かうためにセカンダリードミナント( =V7/V)以外の用途で登場した場合には
「D7が登場した部分は、Cリディアンオーギュメントにモーダルインターチェンジしている!」
と考えると、スムーズに対応できます。
リディアンオーギュメントとは、メロディックマイナーの第IIIモードにあたるモードになります!
「Lydian augmented」「Lyd +」などと表記されます!
- 解決しないD7(II7)上ではC.Lyd +にモーダルチェンジしている。
- D7はC.Lyd +のII度のコードである。
- Lyd +の第IIモードはLyd b7である。
- 故にD7上ではD.Lyd b7が使える。
という手順で導き出すことができます。
モーダルインターチェンジ先の導き出し方
楽曲中に登場する4度上のコードに解決しないドミナント7thコードは「メロディックマイナーのIV度からの借用和音」である
という事前知識があれば、次の手順でモーダルインターチェンジ先を導き出すことができます。
Aメロディックマイナーです!
第IIIモード!
つまりCリディアンオーギュメントにモーダルチェンジしています!
[Lyd b7で処理したいコード]をIV度に持つメロディックマイナーとは?
この考え方を覚えましょう!
メロディックマイナーを基準にした分析の方法
「Cリディアンオーギュメントの第IIモードは…」という考え方では覚えることが多すぎるので、C.Lyd +の親にあたるAのメロディックマイナーを基準にして考えてみましょう。
AメロディックマイナーのIV度にD7があります。
『Mel-minの第IVモード = Lyd b7』という公式さえ覚えておけば、これで解決です。
メロディックマイナーのダイアトニックは
「メドリリミロオ」
で覚えましょう!
- I.Mel-min(メロディックマイナー)
- II.Dor b2(ドリアン♭2)
- bIII.Lyd +(リディアンオーギュメント)
- IV.Lyd b7(リディアン♭7)
- V.Mixo b6(ミクソリディアン♭6)
- VI.Loc ♮2(ロクリアン♮2)
- VII.alt(オルタード)
以上7つの頭文字です!
bVI7上でリディアンb7が使える理由
実際のジャズスタンダード楽曲の例
- Beautiful Love|11小節目
- Blue Moon|6小節目
「bVI7-bVII-I」や「bVI7-V7-I」などなど、bVI7も4度上に解決しないコードの代表格です。
D7-G7-C (II7-V7-I)
Ab7-G7-C (bVI7-V7-I)
このふたつを並べてみると、よく分かります。
bVI7はII7の裏コードとして考えることができるのです。
「裏コード上ではリディアンb7スケール」という音楽理論の公式があります。
その理屈を次の項目で細かく解説します!
裏コード上でリディアンb7が使える理由
分かりやすいようにKey=C換算で解説します。
G7-C△7
これは典型的なV7-I△7進行です。
V-IのVの上ではオルタードスケールが使用できます。
ドミナントモーションしているG7のうえでは、G.altを弾くことができます!
G7 – C△7 ( V7-I△7 )
↓
Db7-C△7 ( bII7-I△7 )
じゃじゃん。
G7を裏コードであるDb7に置き換えてみました。
ディグリーネームに変換するとbII7-I△7となり、4度進行しないコードプログレッションが完成します。
bII7が「解決しないドミナント7thコード」になったので、Lyd b7で処理することになります!
ここでメロディックマイナーのモードの知識を使って分析してみましょう。
G.alt = Ab.Mel-minの第VIIモード
Db.Lyd b7 = Ab.Mel-minの第IVモード
どちらもAbメロディックマイナーを親に持つスケールです。
つまりG.altとDb.Lyd b7は構成音がまったく一緒なんです。
- V7-I△7 = bII7-I△7
- V.alt = bII.Lyd b7 = bVI.Mel-min
という式が出来上がります!
これが裏コード上でLyd b7が使える理由です!
bVII7上でリディアンb7が使える理由
実際のジャズスタンダード楽曲の例
- Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)|2小節目
- Donna Lee|10小節目
ポップスのIV△7-V7-bVI7-bVII-I△7(マリオ進行)などでも目にする、4度上に解決しないbVII7。
bVII7が登場したときも、セオリー通りにリディアンb7スケールで対応することができます。
ミクソリディアンb6にモーダルインターチェンジ
Key=C換算で
「Bb7(bVII7)が登場した部分は、Cミクソリディアンb6にモーダルインターチェンジしている!」
と考えると、スマートに導き出せます。
ミクソリディアンb6は、メロディックマイナーの第Vモードです!
「Mixo ♭6」などと表記されます!
- 解決しないBb7(bVII7)上では、C.Mixo b6にモーダルチェンジしている。
- Bb7はC.Mixo b6のVII度のコードである。
- Mixo b6の第VIIモードはLyd b7である。
- 故にBb7上ではBb.Lyd b7が使える。
という手順で導き出すことができますが、こちらもII7の分析と同じようにミクソリディアンb6の親であるメロディックマイナーを基準に考えると分かりやすです。
Fメロディックマイナーです!
第Vモード!
つまりCミクソリディアンb6にモーダルチェンジしています!
これでモーダルインターチェンジ先を導くことができました!
- Bb7はF.Mel-minの第IVモードである。
- Bb7はC.Mixo b6の第VIIモードである。
どちらの視点から計算しても「Bb7上ではLyd b7が使える」という結論になります!
サブドミナントマイナーの視点から考える
別の角度からのアプローチ。
bVII7の上でリディアンb7が使える理由は
「bVII7はサブドミナントマイナーとして登場するのが一般的」
という知識があると、簡単に読み解くことができます。
- Key=CのSD.mの代表はFmである。(IVm)
- Fm系でBb7を含んだモードはF.Mel-minである。
- Bb7はF.Mel-min(のIV度)からの借用和音である。
- Mel-minの第IVモードはLyd b7である。
- 故にBb7上ではBb.Lyd b7が使える。
この考え方がスマートで分かりやすいですね!
例外:バックドア・ケーデンスにおけるbVII7
IVm7-bVII7-I△7
Key=CにおけるFm7-Bb7-Cというコード進行。
いわゆる「バックドア・ケーデンス」という進行の場合についてのお話です。
この進行で登場するbVII7は「バックドア・ドミナント(backdoor dominant)」という立ち位置に分類されます。
IVm7-bVII7は、同主調c mollからの借用した和音になります。
Lyd b7よりも、下記のスケールて対応してあけたほうがスムーズに解決できます!
- Fm-Bb7のII-Vフレーズ
- Fm Dor – Bb Mixo – C Ion
(c mollのダイアトニックから) - Fm Dor – C Ion
(ドミナント7thを削る省略形) - Bb Mixo – C Ion
(リレイテッドIIを削る省略形) - C.min-Pent +b5 – C Ion
(Cマイナーペンタ+ブルーノート)
moll(モル,モール)はドイツ語でマイナー(=短調)指す言葉です!
C minorのことを c mollと表記します。
この表記では主音が小文字になるのが特徴!
III7上でリディアンb7が使える理由
E7(III7)はBb7(bVII7)の裏コードなので、先に解説した「裏コードの上でリディアンb7が使える理由」の理論で説明できます。
【注意】
III7は9割以上がVIm7に進行するセカンダリードミナントとして登場するコードなので、フリジアン・ドミナント(HamP5↓)で処理するのが一般的です!
Lyd b7を演奏する場面は滅多にありません!